問屋街にかかるもの。

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ある日のこと。

勤務先がある小伝馬町は、名の知れた問屋街だ。

その日は1日、息詰まるような湿気に覆われていた。


年経たビルは、古びた色を一層濃くして、

うずくまるように夏の雨を受けている。


呼吸すら鬱陶しくなり、喘ぐように空を見上げると、


くるり



世界が一回りした。


あっという間に、楽しげな思いになる。



古武士然としたビルと、
雑然と中空を這う電線の間を、


七色の光る糸が、

ちくちくと運針していった。