四ツ谷初めて物語。

四ツ谷は、私の「初め」が詰まっている街。

現在の勤務の子会社がかつて四ツ谷にあった。そこに入社したのが
現職の始まり。

生まれて初めて、
空っぽの立ち上げ直後のオフィスを、備品から一つ一つ揃えていって、
生まれて初めて、
一年後に清算を迎え、清算処理とオフィスの解体をこの手で仲間達と行った。

生まれて初めてSNSと出会い、
生まれて初めてSNSの友とリアルに交わった。
その思い出は、今でも私の基盤であり、
思い出にできないほどに、
現在進行形で彼らが大好き。

初めて立ち上げたコミュ「言葉やさん」の、
オフ会のベースポイントとなった。

それから数年後の7月某日の水曜日。

四ツ谷で気のいい紳士2人と会ってもらえることになった。

「蕎麦善」。

なかなかに敷居が高く、未経験のままに四ツ谷をさった
そのお店が、その日の会合の場所だった。

何を話そうかなあ。楽しい時間を生み出せるかなあ。

と、いつもなら、誰かと会うときには少々のプレッシャーを感じるものだが、
この日は完全にいい具合に脱力し、ふわふわと現地にむかっていた。

わたしごときが、あの愉快な百戦錬磨の二人組に何を提供できようか。
全て任せておけばいい。すっかり信頼していていい。

しんみち通りのまた一本裏手の道を、新宿方面にてくてく歩く。

がらり。

と、店の奥の慕わしい、華麗なる酔っ払いが手を上げて迎えてくれた。

味のあるお銚子が調子が既に並んでおり、
蕎麦味噌、練り梅などの突き出しが添えられていた。

あなたはウーロン茶ね。
と、いわれ、
梅酒くらいのもうかなー。
といってみる。
やめときなさいといわれ、
少しくらいいいじゃん、と駄々をこねてみる。

下戸の私が「酒ノマセロ」と、止める相手に反抗したのは生まれて初めて。

救急車には同乗しないからなと2人に笑われつつ梅酒をいただく。

楽しい、ゆるゆるとした時間。
超クダラナイ話70%、弄りあいとじゃれ合い20%、文学の話10%。

揚げ出し茄子、水菜の御浸し、卵焼きは出汁がしたたるよう。
氷下魚の炭焼き。カンテキが卓上に用意され、レモンを上がり際にちゅちゅっと絞る。
さくりふわりの穴子のてんぷら。天つゆはさすがに蕎麦やならではの美味さ。
蕎麦掻き。天頂の山葵も仲良く分け合い、
連日連夜の酔っ払いSさんから、蕎麦掻に寄せる思いを聞いたりする。
天衣無縫の酔っ払いAさんから、とめどなく流れてくる愉快話に、
何か突っ込もうと企んでみたりする。

鴨。葱とともに。
独特の固めの肉質のはずが、焼き加減のせいか、旨み溢れて、てもたべやすい。

〆の蕎麦。

ツナギの少ない、更科でもない、挽き割りでもない、中間くらいの綺麗なお蕎麦。
自分はいらないといったAさんも、思わず箸を伸ばし始めた。

それから、Aさんの昔馴染みの店に連れて行ってもらう。

気がつくと、私はいわゆる飲みの二次会というものに連なっていた。
これも初めて。

そこでまた、Aさんの祇園話やら、Sさんの酔っ払い伝説やらをたくさん浴びる。

話の端々で、いじられて笑い、ちょっと褒められて涙ぐんだりして、
あっという間に時間が過ぎていって、そろそろ帰りの時間。

すっかりご馳走になりました。

そこで頂いた教え。

①××歳から何を始めようが遅くはないって。
②太れ。
③恋をしろ。

ううむ。なるほど。

出てきた料理は半分は私に回していただきましたので、
反抗する術もございません。

華麗なる酔っ払い紳士達。

人生ご馳走様でした。

また、遊んでください。