つれづれ吉祥寺、つれづれ蕎麦。
昨日は、薪能鑑賞に備え、早くから日程調整をして有休を取得していました。
八王子からだと開始時間にまにあわないので、思い切って。
同じく吉祥寺に縁のあるお友達とご一緒できることになりましたので、15時に待ち合わせ。
お友達には久しぶりの吉祥寺。
ハモニカ横丁、プチロード、なかみち通りのおちゃらか、mist、などなどと、あちらこちらと連れまわし、あっという間に一時間。
頃合いや、よし。
薪能ともう一つの目当ては、手打ち蕎麦の中清での夕暮れ蕎麦飲みです。
大正からつづく古い店は、私が毎週一回、10年近くも前を通りながらも入ったことがない、いささか難しそうとの噂も聞く街中の店。
日本中の旨し酒、美味なる蕎麦前、朝6時から打つ手打ちの蕎麦は、国内各地の良きものを集めているとの前評判です。
さて、ですます調はここまで。
奥から出てきたのは、やはり難しそうなご主人。
しかしひるむことはない。
今日の連れは、人心溶かすこと天女のごとし、籠絡せぬ輩はついぞなし、という人生の達人。
お友達がご主人に教えを乞いながら注文していくと、難しい顔は次第に和らぎ、
玉手箱のような知識、真摯な職人魂、含羞がほころんび始め、
愉快なこと極まりない。
蕎麦前には。
蕎麦味噌、もろきゅう、
板わさ、
牡蠣豆腐
豚珍巻。
美味いと、何故か笑いが止まらなくなる。
食べては、うふふ、
つまんでは、ぐふふ、と、
ようよう、アヤシい卓に成り果てぬ(笑)。
お友達は、ご主人から知恵を引き出して、
日高見の限定、
新潟のお酒を片口に。
銀座で酔ってぶっ倒れたことのある私、
牽制しながら5mmほどご相伴させてくださる。
次第にお客が出入りしだす。
ご主人と酒、蕎麦、人生談義に花を咲かせていると、新潟の貴重な名酒の下りで、とうとうお客が話に入ってきた。
この方は長野からお越しだと、後から伺う。
さあ、〆の蕎麦を。
おすすめを教えてくださいと申し上げると、
では、とっておきのを二種、と、ご主人は奥に行かれた。
ほどなく出てきたのは、
せいろ二種。
打ち立ての蕎麦と、
やや色の濃い粗挽き蕎麦。
…これは、もしや。
ご主人、これはもしや粗挽き蕎麦の熟成ですか?
そう、三日熟成。
噂には聞いていたが、初回で頂けるとは。
箸先に塩をちょいとつけて、熟成蕎麦をたぐると
くるみのような深い香り、
ぐみぐみとした食感、
濃いコク深い味わいの、
塩で頂けば甘みさえいやまして、
驚天動地とはこのこと。
一方、打ち立てのせいろは胸のすくような清廉な味で、
ツユの塩梅もちょうど良い。
堪能しきってお勘定。
23区では有り得ないお値段に、また驚く。
語り尽くせぬ店への賛辞を胸に、
名残惜しくもお店を後にいたしました。