東京都酒造組合 利き酒会「呑み切り」2013年。

東京都にも蔵があり、旨し酒が醸されているという、当たり前の事実はあまり知られていない。
運良く、GREEでご縁をいただいた「るりまつり」さん、この方とのご縁がなければ
私も知ることは無かっただろうし、ましてやこうも思い入れることは無かったと思う

年に一度の「呑み切り」、利き酒会である。ここ何年も申し込んでは予定が合わず、
参加することがかなわなかったが、今年はもともと消化義務のある休暇をこの日に重ねていたので、
準備万端で参加することに、

していた。

が、この1週間ちょい前、まさかの交通事故でひざを負傷。その時、ふっと、
「あ、呑み切り行けるんか、ボク」と、脳裏をよぎったのは言うまでもない。
で、どうしたかいうと、行きました、杖付きながら。
どんだけ酒が好きなんだ、と言われれば、実はほとんど下戸で、飲める限界はセンチメートル単位。
だがしかし。
だからといって酒の味が嫌いな訳は無い。
私はニッポンが好きである。職人が好きである。発酵、麹、大好きである。
日本酒を応援しない理由が無い。愛さない理由が無い。
数滴レベルでも、心頭滅却して味わいつくしてみせる、と、燃え盛るは愛国心の炎。

というわけで、行ってきました。

総勢7社、各4種。
石川酒造の多満自慢、小澤酒造の澤乃井、中村酒造の千代鶴、野崎酒造の喜正、田村酒造の嘉泉、
豊島酒造の金婚、小山酒造の丸真正宗。

それぞれの蔵の方に、熱く語る酒への思いと、問えば溢れんばかりに帰ってくる酒の知識を伺いながら、
まずはのんでごらんとの小澤酒造の方の言葉に従って、4種順番に味わってみる。
日本酒度は一応甘辛の指標にはなるけれど人によって感じ方は違うから、無心にどうぞとの言葉に従う。

NO.325:日本酒度1.0、酸度2.0の純米酒。甘い方が好きな私はこれが飲みやすいんだろうなあと思ったら、
暴れん坊なお酒、という印象が強かった。祭りで言うならだんじり祭り
一口含むとどん、ときて、あとから酸味?キレ?がばん、とやってくる、荒ぶる勇ましい酒との印象。

NO.346:日本酒度13.0、酸度1.9の純米酒。むりむり、辛いの苦手だしきっと無理という印象をはねのけて、
口に含むと、なんと。嫋々としたいろっぽい、越中おわら風の盆のような、まろい酒。いつまでもいつまでも、
ゆらりゆらりと飲んでいたいような、先の酒とは真反対の酒だった。

NO.421:日本酒度1.0、酸度1.8。これはどーだ、と含んでみると眼前に花吹雪がぱっと舞う。
なんと華やかな、鮮やかな、まるでワインのような、、、と、見てみると純米吟醸なるほど。
吟醸とはこの華やかさがウリ、むべなるかな。うきうきしてくる。

NO.98:日本酒度4.0、酸度1.5。大吟醸。どれほどのものだろうと、舌にのせる。と、
一転、しん、とした静寂と風格が体をめぐった。純米吟醸が咲き乱れる桜とすると、大吟醸は。
咲き定まりて微動だにしない大輪の牡丹か芍薬か。一瞬、陰影礼賛の世界へ引き込まれたかと思った。

次、次、と、夢中になって各酒造を回る。

豊島酒造の金婚。こちらの貴醸酒には瞠目した。
酒で再度仕込んで寝かせた古酒のようなもの、と、簡単に説明してくださったが、
その褐色の液体は複雑に何重にも重なる香りと味は十二単のごとく、感じても感じてもその果てを見せることはない。

田村酒造の嘉泉。小山酒造(23区内唯一の蔵である)の丸真正宗。あっちこっちと杖をつきながら首を突っ込む。

きがつくと、蔵の方とみりん談義で盛り上がる。みなさん実に味のよいみりんをつくっているそうで、とっておきの夏の飲み方を教えてくれた。
「みりんレモン」と、「ジンジャーみりん」。試してみる価値はありそう。

ビン貯蔵の持つ意味。白麹で醸した酒の新しい境地。全国各地の希少米を発掘し、毎年新しい酒を造るその尽きない情熱。
聞いても聞いても飽きることなどあり得ない話の数々に、くらりと酔いそうになる。

あっという間に時間がくれば、組合会長さんが最後だからとあれこれ薦めてくださる
上戸と下戸って、どうしてそういうか知ってる?
そんな蘊蓄もご披露してくださり、楽しいときはひとっ飛びである。

もっと、たくさん呑める人だったらよかったな。
これら全て、スポイトで数滴ずつ舐めとった結果で、それだとのどごしまでは測れない。

でも、味わえるものは確かにあった。
それは、酒の味、醸す人の魂、つなげて行く人の勇気、広げて行く人の心意気。

これからも、応援します。

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