それを封筒にちょいと、入れて。〜晴れ晴れ句会、睦月の陣〜

「じゃ、やりましょうか。」


そう言って、晴れ晴れ句会のキワ姐さんは、御宿かわせみの女将よろしく、
にっこりと、婉然と笑いながら、
その白魚のような手で以て10枚余の封筒を、
扇よろしくずんばらりと、開いた。

キワ姐さんの口切りを受けた句会メンバーの反応は3種。

1)「なにそれ、おいしい?」…やったことがないヒト。
2)「来たか。(ニヤリ)」…何度も経験済みの大人のヒト。
3)「きゃーーーーーーーーーーーーー♪」…シッポふって喜ぶヒト。

この日。
言葉による、
言葉のための、
俳句におけるバトル、キワ姐さんはその嚆矢を放ったのだった。

「袋叩き」。
各1句ずつ提出した句に、その場でランキングをつけ、最下位になった句の詠み人を、全員で袋叩きにする。これを繰り返し最後の一人が勝者と・・・

そうじゃなくて。

「たらい回し」。
各1句提出。まず1句について全員が赤ペンいれては次に回す。見所がなければ却下と書く。最後に赤が一番すくなかった句の詠み人が勝者と、、、

だからそうじゃないって。

「袋回し」。
それは、キワ姐さんが前々回の句会の際、披露してくれた俳句遊びのこと。
この日いたのは13名(いや12?)。
各々、キワ姐さんの手からひらりひらりと配られる封筒を1枚手にしたら、
その封筒に、好きな言葉を書くわけだ。例えば「水着」、「スプーン」等々。
さらに手元には、13枚の真白な紙片(短冊ともいう)を用意。
そうしたら、
いっせーのせで封筒を隣に送る。
手元にはとある言葉のかかれた封筒が来る。
その言葉を織り込んで、かつ、季語も突っ込んで俳句を作る。
それを紙片に書いて封筒に入れる。
それを順繰りに全部分。

つまりだ。

句会終わって日も暮れて、
晴れ晴れ家は最終営業日。
句会後の交流会ではそれとなく、いや潤沢にあれやこれやの酒も食べ物も流れてて、
理性も観念もイイカンジで崩れ始めているその時に、
次から次へと「ハイク」を作るという、それがこの遊び。
(注:いやべつに酒が入っていなくちゃならない訳じゃないしマジメにやってもいいわけですがねゴニョゴニョ)

さくさく作れりゃ御の字ですが、そうはイカの甲羅干し、問屋もそうそう卸さない。

うんうん唸っていればオノレの脇に回ってきた封筒はひたすら溜っていき、
無言のプレッシャーをどしんどしんとかけてくる。

しかも。

うちの句会の人達が、マトモな言葉ばっかりもってくるとは限らない。

さらに。

おわったら当然、ランキングがつくわけで。

。。。。。。


闘い済んで、夜は更けて。
カラダ中のブドウ糖がどっかいって、アドレナリン放出しきった面々は、
それでも。

ああ、やっぱり。
いいなあ。と、思ったのでした。

どんなに凝っても、
どんなに踏み外しても、
どんなにウマくてもヘタでも、
どんなに俳諧そのもののようなクラシックなものをつくっても。

どんなに正統派からは外道といわれるモンでも、
どんなに俳壇のご意見番からラブコールがすっ飛んでくる秀作でも。

えいっと作って、投句しあう。
そしたらそれを受け止めてくれる。

そんな人達がいて。

よかったなあ、と。

思うのでした。