吉祥寺、Parisienneでラストワルツを。
吉祥寺、パリジェンヌ。
父との、ここでの最後のランチを。
長く長く、食べて話して。
そして、
惜しみながら、
でも笑いながら、さようならを。
前菜には、薫製、リエット、コンフィ、マリネと、素材を活かしながら手練れの技を。
お得意のフォアグラには、紫芋のガレットとブルーベリー、至高の紫でワンサイズ大きな供応を。
魚には、鱈のポワレを、香草のきいたトマト風味のクリームソース、確かこれにはワタシの好きなあの酒の風味が。
肉には牛ヒレのステーキと、朝霧豚の網脂包みハンバーグ、
ソースにはガルバンソや牛蒡のアクセントが効いた、
増井兄のルーツを彷彿とさせる正統さに、
ガルニチュールや添えのフレンチトーストがもたらす、
甘みの癒し。
デザートには、イチジクや紅玉たちのフルーツエキスのシャーベット、ライプオリーブのアイス、柿のコンポート、濃厚なショコラ、西浜芋のパウンドケーキ、しっとりとしたチーズケーキ。
父と幾度、ここで話し、ケンカすらしただろうか。
「言葉やさん」の仲間達と、幾度ランチをともにしただろうか。
GREE時代の仲間達を、吉祥寺まで呼びよせて食事をしたことも。
幼なじみのご夫婦を、引っ張り出して旧交を温めたことも。
会社の元同僚を、ここに招待してランチをしたことも。彼女は昨年天国へ召され、ここが思い出の店となった。
信仰の恩人と、信仰の友と、幾度ここで熱く語りあったか。
「これで、寿命が少し短くなりますなあ」
と、父がふと、言った。
「美味いものを、語りながら食べるっていうことは、いのちを確実に養いますから」
うん。
「その店が無くなってしまうからねえ」
それを受けて増井シェフは、何とも言えない、でも、満ち足りたような笑顔で、
「すみませんねえ」
と。
シェフはちっとも悪くないのに、子供みたいに別れを惜しむ私たちをあやすように仰って、また、にこり、と。
パリのお嬢さん。